技術評論社刊『すぐわかるオブジェクト指向Perl』公式サポートページ まえがき

まえがき

 Perl はフリーで入手でき、習得がやさしく、数行のプログラムで驚くほど実用的なツールが作成できるプログラミング言語として、非常に人気があります。ぼくはオペレーティング システム Linux、無限にカスタマイズ可能な超エディタ Emacs とならんで、「世界 3 大フリー ソフトウェア」と呼んでいます。
 さきほど数行のと書いたのは誇張でもなんでもなくて、実際たった 1 行で完全に実用的なプログラムを書くことができます。これをワンライナー(one-liner。なぜか一行野郎と訳されることが多い)と言います。こういうやつですね。

#! /bin/perl
#
# sortInLength.pl -- 行が長い順にファイルをソートする
#
# sample file name: simpleSort.pl

sort {length($b) <=> length($a)} <>;

【メモ】このプログラムはめちゃめちゃ高速化できます。詳しくは本書の 153 ページをご覧ください。

 このように、わずかな行で書ける便利ツールの素、他のプログラムをつなぎ合わせて連続実行するグルー(glue 糊)言語、という風に語られることが多い Perl ですが、実は巨大なシステムを Perl で構築することも可能です。実際「人力検索はてな」や「Amazon」、「mixi」などは Perl で開発されていることで有名です。
 ということで本書では、Perl で大きなプログラムを作るのに必要な以下の技術について解説します。

・リファレンス
・パッケージ
・モジュール
・オブジェクト指向

 「いや、別に自分は巨大なプログラムなんて書きませんから…」とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。実際、これらの技術を身につけなくても、Perl で自分なりの便利プログラムをバンバン書くことは可能です。しかしながら、縁あってこの「まえがき」を読まれているみなさんには、この機会にこれらの技術をマスターされることを心からお勧めします。というのは、以下の理由からです。

1. 役に立つ

 当然ですが、これら 1 個 1 個の技術はそれ自身大変有用です。特にリファレンスを使えば、2 次元配列や 2 次元ハッシュと言ったデータ構造を作って、世の中の複雑なデータを自然に格納することができます。Perl で複雑なデータ構造を作るのは、驚くほどカンタンです。

2. 他の人が作ったプログラムを取り込める

 Perl は世界中で愛用されているので、世界中の腕自慢が作ったプログラムの一部がネットで共有されています。これらをもらってくれば、ちょいちょいと前後を書くだけで自分のプログラムをどんどんパワーアップできます。しかしながら、これをやるためにはパッケージとモジュールの知識が必須です。

3. 世の中の流れについていく

 プログラミングを始めてしばらくたつと、やはり巷で噂の「オブジェクト指向」というものが気になってきます。Perl の OOP(Object Oriented Programming オブジェクト指向プログラミング)には他の言語にはない手作り感覚というか、プログラマーの裁量に負う部分が多くて最初は戸惑うんですが、あえてこの言語で OOP を学ぶというのも、ちょっと違う角度から OOP を眺めることができて、逆に OOP の本質に迫ることができるんじゃないでしょうか。

 しかしながら、これらの技術、特にリファレンスと OOP を学ぶのは、ちょっと独特な感覚があって最初のうちは戸惑うこともあります。たとえて言うなら自転車に乗るようなものです。

 私事で恐縮ですが、小 3 か小 4 の頃だと思うんですが、ぼくに自転車を教えてくれたのは、父の仕事を手伝っていたK兄ちゃんという人でした。具体的にいうと、K兄ちゃんはぼくの自転車の後ろから、荷台を持って押して走ってくれていたのですが、ある程度スピードに乗ったところで、ぼくがあまりにも調子よくペダルを漕いでいるので、特に前触れなく手を離したそうです。ぼくは、当然ながら後ろを見ていなかったので知らないんですが、そのまま調子よくスイ〜と走って行ったそうです。この話を後で聞いて、我ながら暗示に掛かりやすいと思うんですが、その次の日から自転車に乗れるようになったんです。
 ということで、この方針でみなさんにリファレンスや OOP を習得していただこうと思います…。ってどうやって!?
 とりあえず本文をお読みください。

【メモ】上記のとおり、本書は Perl の初級チョイ過ぎぐらいの内容を扱っており、変数、if 文、ループといった最初歩の解説は直接の目的としていません。初歩の内容もチョコチョコ解説していますので、Perl 未経験の方が本書にいきなり当たってもそれほど困らないとは思いますが、もし本書の内容が難しく感じられる方は、より初歩の解説書をまずお読みください。本書の著者の本としては『すぐわかる Perl』(技術評論社刊)を自信を持ってお勧めします。

©2008 Chihiro Fukazawa. All rights reserved.



『すぐわかるオブジェクト指向 Perl』

深沢千尋■著
技術評論社■刊
B5変形版■564ページ
定価■3780円(税込)
ISBN■978-4-7741-3504-6
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