日々叢書(この著者ちょこちょこ昔の文章直します。スイマセン)

『プライドと偏見』という題名はちょっと

『ブリジッド・ジョーンズの日記』という映画(見てませんが)の
主人公が愛読している本、という帯がオースティンの『自負と偏見』に
巻かれていてなんとなく不愉快な感じがしました。映画のキャラクターが、
キャラクター付けのために読んでいるような本、ということでしょうか。
純粋に面白い本なのですが、やはりイギリスの古い小説ということで、
わざわざ読むような人はオタクというかヘンな印象があるんでしょうか。

さて、『自負と偏見』ですが原題は pride and prejudice といいます。
プライド・アンド・プレジャディス。これは、英語だと普通にかわいい題名だそうで、
日本語にすると自負と偏見ですから妙に固くなる。オースティンの小説は
そんなことで日本では損をしている、というようなことが
『エマ』の訳者あとがきに書いてあってなるほどと思いました。
これは、明治以降漢語ばかりを使っていてやまとことばを捨ててしまった
日本人の不幸ですね。『見栄っ張りとひがめ』とかにしたらどうだったでしょう。
落語みたいでヘンでしょうか ;;;

ちなみにこの本、新潮文庫版(中野好夫訳)が圧倒的に読みやすくて
正確っぽいのでおすすめです。岩波文庫(題名もすごくて『高慢と偏見』)は
読みにくいし、どうかと思う訳も多いので注意。

漢語で思い出しましたが、漢字の熟語の大半は明治時代に
福沢諭吉とかがフランスやドイツの文献を導入するときに考えた、
日本製のものだそうです。『文字コード【超】研究』にも書きましたが、
中華人民共和国という社会主義思想の国がありますが、
人民、共和、社会、主義、思想は全部日本製の漢語だそうです。
他にも哲学、科学関係のモダンな漢語は大体そうらしくて、
日本製の漢語によって中国語で哲学や科学を学ぶことができるように
なったそうです。
ちなみにタイやインドネシアなどの東南アジアでは、
哲学や科学の授業は英語でやっているそうです。
もっとも、だからアジアの大学出身者は英語で全然不自由しないという
こともあるのでよしあしですね。

さて、『エマ』に続いて映画化された『自負と偏見』ですが、
日本語タイトルがあっと驚く『プライドと偏見』だそうです。
これはちょっと。カタカナ語と漢語の混ぜ書きはものすごく違和感があります。
これなら本で慣れ親しんでいる『自負と偏見』か、
いっそ『プライド・アンド・プレジャディス』にしてくれた方がよかったです。
なんとなく日本語題名を見ただけで「訳せばいいんでしょ」という
戸田奈津子的な実用主義を見たような気がして、見に行く気が薄れました。
まあ見に行くかもしれませんが。
しかし、本は面白いのでおすすめですよ。

Last Update : 2006/03/09 01:55