日々叢書(この著者ちょこちょこ昔の文章直します。スイマセン)

夜中にヴェランダでバカが電話掛けてる

アパートの隣のとなりにバカが越してきて往生している。
どこがバカかというと、深夜の1時にヴェランダに出て電話をしている。
「ぼくという人間は・・・」とか「君という人間は・・・」とか言っている。
こんなバカがモテるとも思わないので、恋人に電話してるんじゃなくて口説いてる最中という説を
採りたい。いずれにしてもなんで部屋の中で掛けないのか。バカだから。
それはそうなんだけど、バカなりに何らかの理由があるんだろう。
職場で話題にしたら、携帯の電波が届かない説を出した人があった。
ナルホドと思ったけど、ぼくの携帯はどんな室内でもバリ3(アンテナバリバリ3本)だ。
キャリアーによっても違うのかもしれない。ちなみにぼくのはau。
でもぼくは「夜空を見ながら電話してたら何となく気分がいいから」説を採る。
かわいい説を採ったからといって特に感情移入しているわけではない。
バカは若いうちに芽を摘んでおいたほうがよい。ヴェランダに出て、身を乗り出してみると、
バカがいい気持ちで夜空を見ながら「だからあ、ぼくら人間という存在は・・・」とか
話している。ぼくがヴェランダの手すりをバン、バン! と叩くと、振動が伝わり、
面白いぐらいにバカがどっきりして周囲を見回す。ぼくが声を殺して
(隣のとなりだから加減が難しい)「迷惑ですよ!」と言うと
「すいませーん」と少しも済まなそうでない声を出して室内に入っていく。
窓を閉め際に「いやあごめんごめん、隣のとなりに変なおじさんが住んでてさァ・・・」的な
会話を継続してるのがちょっと聞こえ、改めて腹が立つ。

特筆すべきなのは、まったく同じやりとりが3回あったということだ。
これ、バカだと思いませんか。今度は口でなんか説教してやらない。
どうするかというと、クリップヒーターを買ってくる。クリップヒーターは
ワニグチクリップのオバケにACのコードがつながったような形状をしてい、
バケツに水を張って端っこを挟むとクリップの先端にニクロム線が仕込んであって
水が沸いてくる仕掛けになったものである。実はぼくの親父がある種の職人で、
昔使っているのを見たことがある。あれを、
今度「宇宙っていうのはさァ・・・」とかいう声が聞こえたら
ヴェランダの手すりに挟んで電源を挿してみようと思う。
ジュー、という音がしていい感じに肉の焦げる匂いがするだろう。

でも今だに実行する機会はない。(いや、実行する気もなくて、
クリップヒーターも買いに行ってないのだが)それからプッツリとバカがヴェランダに
出てこないからである。ぼくのお説教が効いたわけではなくて、明らかに今年の猛暑の
せいだろう。こう暑くてはロマンチックな気持ちにもならないわけだ。
今度ヴェランダから「そもそも社会ってのは・・・」とかいうバカの声が聞こえたら、
ああ秋だなあと思ったりするのかなあ、と思う。

*

最低気温が摂氏 25 度を越えることを熱帯夜というが、30 度を越えると地獄夜というそうだ。
気象庁の用語としては以前からあったが、今年はじめて適用したそうな。

Last Update : 2004/08/07 12:50