日々叢書(この著者ちょこちょこ昔の文章直します。スイマセン)

ラスト・サムライなあ・・・

さいきん例のトリヴィア騒ぎで一気に脚光を浴びた感のある
唐沢俊一さん主催の「一行知識掲示板」(http://www.tobunken.com/)は
非常に愛読しています。ぼくも相当書き込んでます。
マー世話にもなったが世話もしたという感じか。
以下の項は同掲示板の知識に寄ります。

昔の日本人は右手と右足、左手と左足を同時に出して歩いたそうです。
いわゆるナンバ歩きというやつで、農耕民族の自然な動き(?)だそうです。
また、和服で手足を交互にシャンシャン出して歩くとハダケるそうで、
お茶とか習いにいくと歩き方を矯正されるそうです。
佐川急便の飛脚のマークを見てもそうやって走ってる、
と永六輔さんが言ってたそうです。歌舞伎の歩き方もそうですね。

では、いつから歩き方が手足を交互に、体をねじって歩く/走ることになったかというと、
西南戦争だそうです。西洋式の行軍をいち早く身に着けていた薩摩軍に対して、
官軍の急に徴兵された百姓はまったく走れず、あっという間に追いつかれて
どんどん、どんどん殺されてしまい、あわてて西洋式の走り方を導入することになったとか。
で、これに大反対したのが歌舞伎界で、そんなみっともない走り方ができるかい(江戸弁)、
と反対があったそうですが、まあ兵隊が殺されたら大変なので美より実用を取ったとか。
ということで、歌舞伎の所作はフツーの日本人の所作と同じだったんですね。

ではどうやって走ってたかというと、西南戦争の話でわかるとおり、
昔の日本人は「走る」ことじたい特殊技能だったそうです。
そういえば、(たしか)インドネシアでは現代でも大の大人が走ることは無作法とされてい、
日本のビジネスマンが急いで走ってて笑われたりしてるそうな。
たしかにぼくも上京して駅の構内を走ってる大人を見て何事かと思いました。
以前外国版の「なるほど・ザ・ワールド」のような番組で
日本の珍常識を紹介するクイズがあって、
西武池袋線かなんかの駅で、終電を降りた乗客が異常に走り出すのはなぜか
(答えは、タクシー乗り場に早く並ぶため)
というのがあって、経済大国の割りに貧しい眺めだなあ、と思って
ちょっと国辱的に感じましたが、あれも明治以来の近代軍隊訓練の賜物なんですね。



戦国時代の戦争で死んだ人のトップは弓矢で、
その次は種子島式火縄銃、「石の下敷き」などで、
基本は遠戦主義だったそうです。
よく馬に乗って1対1でやーやーと名を名乗って切り結ぶ風景は、
実はあまり見られなかった。

刀も、あらかじめ岩を打ったりしてわざとナマクラにして(のこぎり状にして)
突き刺して殺すやり方が主流で、刀も何人か殺すと脂肪が着いて切れなくなったり、
折れたりするので、七人の侍にあるように何本もスペアーを地面に刺しておいて
使うやり方が多く、場合によっては糞便をつけておいて破傷風にさせる、
といったことが多かったそうです。
「刀は武士の魂」とかいって粉かなんかをぽんぽんぽんぽん・・・というのは、
江戸時代もだいぶ平和になって趣味/教養としての武芸が出てきての話らしい。



といった内容を期待して映画「ラスト・サムライ」を見ると、
完全に裏切られるので注意が必要です。
時代考証が大雑把だからどうの、という教養的な内容以前に、
登場人物の心理が破天荒に破綻してて、ちょっとアタマ痛くなります。
ていうかトム・クルーズさんチャンバラやりたかっただけでしょ!
例の通販の会社の社長の映画(すごく見たいんですけど)を思い出します。
とにかく特攻! 虐殺! 切腹!〜それがブシドー〜という映画で、
ヘンな日本観がまかり通るのでは、という心配も、それ以前に
アメリカ人主人公トム・クルーズの心理が理解不能なので必要ないか、と思ったり、
渡辺謙こんな映画で日本を代表して賞を受けても名誉なのか、と思ったり・・・。
(致命的におかしいのは天皇と武将の関係。これ、週刊文春の映画評で触れてないのがおかしい)
まだ「ブラック・レイン」の方がよかった。

クライマックスは武士道軍団の特攻による官軍(急に鉄砲を持たされた若い百姓たち)の
大虐殺ですが、これが流行りのCGを多用したうじゃうじゃクライマックスになってます。
ジュラシック・パーク、USAゴジラ、平成ガメラ2、スターシップ・トゥルーパーズの頃は
感動してたんですけど、スターウォーズエピソードI、指輪物語、マトリックスときて、
もう飽きました。結局、コンピューターで描いてるんでしょ! コピペじゃん!
ワープロで Ctrl-V どんどん押すと「シャイニング」のジャック・ニコルソンみたいに
同じ文をいっぱい書けて便利だなあって話ですよね。
なんか予告編見てたら「トロイ」という映画が来るそうで、
これはギリシャの軍艦がうじゃうじゃだそうです。もうええわ!
誰でもいうことですが、CGの世の中になって映画って軽くなりましたね。

Last Update : 2004/01/15 18:05