日々叢書(この著者ちょこちょこ昔の文章直します。スイマセン)

テレビの買い替えブームを斬る(2)デジタル記録レコーダーとスカパー!2

まず、デジタル記録型レコーダーについて。
これ、Movable Type の方でも書きましたが、非常に便利なもので、
絶対買った方がいいと思いますが、これまたチョット買いにくい状況です。

おおむね HDD レコーダーと DVD レコーダーと HDD&DVD レコーダーがあるんですが、
一長一短あって、結局 HDD&DVD レコーダーが便利だと思います。

まず、HDD レコーダーの便利さについて。
従来のレコーダーだといざ録画というときに、
どのテープ(メディア)が空いている、いないというのがあって、
たまたま入っているすごく大事なテープを誤って上書きしてしまうか、
最初の方だけ使ったテープが大量にできる、ということになります。
編集やダビングも実時間掛かるし劣化を伴うので現実的ではありません。

(ちなみにダビングは dub(複製する)というレコード製作者のスラングで、
 もとは double から来てるそうです。ジャマイカのダブも同じ言葉だとか)

それが HDD レコーダーになると、テープを挿入する手間がなく、
思いついたらすぐポンと録画、ということができ、非常にハンディです。
終わったらコマーシャルどころか不必要な部分をどんどんカットしてしまいます。
歌番組を録ってモー娘。だけ残す、ということが可能です。

しかし、HDD レコーダーは VCR(ビデオカセットレコーダー)と違って
メディアの入れ替えということができません。
つまり録りためたコンテンツはどんどんどんどん HDD を圧迫していき、
結果的にいつか消すことになります。
もちろん別の VCR にダビングすることもでき、
それだけでも VCR だけよりは有用だとは思いますが、イマイチです。

でも、クリップオンをはじめ、こういう製品は結構売れています。
これはなぜかというと、世間の人ってタイムシフト(仕事やってる間に放映されてる
番組を録って家に帰って見る。見たら消してしまう)という用途には
関心はあっても、テレビ番組を保存して何ヶ月かたってまた見る、
ということには関心がない場合があるんですね。
友達がその友達の家に行くと「父用」「母用」「息子用」というビデオテープが
数本あってたまげたそうです。つまり各人がビデオテープにどんどん上書きしていくだけで、
番組を保存しようとしない。

さて、保存しようと考えるなら、HDD&DVD レコーダーを考えることになると思います。
HDD なしの DVD だけのレコーダー、というのもあるにはありますが、
これ CD-R しかついていないパソコンみたいなもんで、使いにくいと思います。
ていうか、自分で持ったことがないので使い方がよくわかりません。
(AV機器の素人批評はこういう点で難しい。家計的になんでもかんでも買うわけにいかないので)

家庭用記録型 DVD は
・DVD-R 1回きりの書き込み CD-R に相当。普通の DVD プレイヤーで掛かる(こともある)
・DVD-RW 何度も書き消しができる。前から使っていくことしかできない。
 ファイナライズすれば DVD-R として使える
・DVD-RAM 何度も書き消しができる。HDD なみの自由度がある。
 普通の DVD プレイヤーでは掛からない(対応品も一部にあり)
という種類があります。
-RW と -RAM はソニー/パイオニア陣営と東芝/松下陣営に分かれてて決着がついてません。
これ、結局決着がつかないまま次世代ディスクに行くんじゃないかと思いますが、
次世代ディスクの規格も統一されてません。
これ、自分が提唱した規格が標準になるとよほどおいしいことがあるんでしょうね。
血を血で洗う世界です。
だからか、-RW も -RAM も高価です。
ぼくはもっぱら -R を使っています。値段もありますが、DVD プレイヤーしか持ってない人に
配布したいからです。生メディアの製品もいろいろ買い倒しましたが、
現在では「メディアエンポリアム ノーブランド国産 100枚買って1枚170円」に
落ち着いています。DVD は mpeg なので時間的/空間的にも非可逆圧縮を行ってて、
レートによって画質が変わるんですが、
ぼくは1時間4.7MBpsで1枚2時間に落ち着いています。

さて、前置きが長くなりましたが、ぼくは東芝製 RD-X3 を買って、
テレビを録画し、CM カット編集し、DVD-R を焼いて事務用ファイルにファイリングする、
という非常に快適な生活を送っていました。

ところで、ぼくは電波状況であれこれ悩むのがキライだったのと、
ADSL ちょい前にネットの専用線を引きたかったことがあって、
自宅をケーブルテレビにしています。
これが結構便利で、スカパー! のチャンネルも入ります。
以前はアナログのレギュラーコースと、高級コースがあって、
レギュラーコースがだんだん、だんだん使えるチャンネルが減ってきていて、
ああこれは高級コースに変われということかな、でも高いしな、
と思っていました。
これが去年いきなりデジタルコースができて、
アナログの高級コースは新規受け付けを中止するので、
アナログのレギュラーコースの人はチャンネルを増やしたかったら
デジタルコースに変えなさい、いまならキャンペーン価格で
ネットの方も増速しますよ、と言い出しました。
まあ悪い話じゃないなあと思ったので、
テレビをデジタルコースにし、ネットも増速しました。
さあこれで昔のテレビとか死ぬほど見るぞ、と血沸き肉躍ったんですが、
これが大きな大間違い、大変なことが分かったんです。

コピーワンスです。
といえば「あーあーあーあー」と思われる方が多いかと思うんですが、
具体的に言うとスカパー!2に当たるデジタルCS放送の部分は
「1回しかコピーできない」
という仕様になっています。

具体的に言うと(こればっかし)、RD-X3 の HDD に録画したコンテンツには
「コピー不可」というフラグが立っています。
で、これは DVD-R に焼けないんです。
RD-X3 は DVD-RAM 対応機ですので、-R 主義を止め、-RAM に記録するようにすれば
いいのかなあと思います。これはできます。HDD に録って、-RAM に「移動」することは
できます。(後述します。)
それでも、-RAM は -R に比べて高価だし、
何回も記録できるだけあってディスク面がデリケートで扱いづらいし
(-RAM はケース入りも売ってて、一時的な保管には非常に優れたメディアだと思うんですが、
 ファイリングはしづらい)
なにより作ったディスクを他の DVD プレイヤーで再生できない。

別に海賊版 DVD 焼いて儲けようっていうんじゃないですよ。
でもモーヲタ同士で番組を交換したり、郷里の老親に東京の番組を送ったり、
したいじゃないですか。これは著作権法が寛恕している範囲内だと思います。
そもそも映画や音楽クリップと、放送しっぱなしのコンテンツが同じ著作権法の
庇護を受けるってのはおかしい。「NHK少年ドラマ」はヴィデオテープがもったいないから
どんどん上書きしていって残ってないのを、家庭で当時の大金を使って私製に録画してる人を
頼ってDVDまで出しましたよね。去年出たレッド・ツェッペリンのライヴ DVD も、
大幅にオーディエンステープ(海賊版)の映像が使われてました。
私製録画が守る文化もあるんじゃないでしょうか。

コピーワンスはコンテンツの中に信号が入っていて、
これをあるメディアに転送した時点でフラグが1回減じられ、
これ以上コピーできなくなる、という仕組みです。
(遺伝子の「テロメア」に似てますね。)
-RAM の場合は直接録画するか、HDD から -RAM へ「移動」する
(HDD の記録は消滅する)ことで記録を可能にしています。

以前から、スカパー!でも一部のコンテンツではコピーワンスが取られていましたが、
それは映画チャンネルなどのペイパーヴュー(pay per view 有料チャンネル)に
限られていました。
それは分かる。ぼくも市販の DVD やレンタルヴィデオをダビングするのは悪いと思います。
が、スカパー!2や、今年春から本格化する地上波デジタル放送では、
「全時間全番組がコピーワンス」ということになるそうです。
それこそ通販の宣伝もです。
ありえねー! つまり、デジタル化放送の内実は、

・多チャンネル化(今はしょうがないけど、相当しょうもない放送が多いですよ)

・高画質化(デジタルになって伝送ノイズが少なくなってクリアになるとは思うけど、
  mpeg 化する時点で画質がだいぶ落ちるので必ずしも高画質とはいえない)

・双方向性(通販がリモコンで買えたりできるようになる・・・いらねー!!!)

・ワイド化(前項で批評しましたが、意味ないと思います)

という「利点」と引き換えに、

・デジタル録画の実質的な“禁止”

をもたらすわけです。

まーデジタル録画じたい、ぼくがはじめたのはおととしの2月頃なので
しないと死ぬってわけじゃないし、
アナログ録画は従来どおりできるんですが、
ちょっと気になるのは、去年からさんざん
「テレビ新時代の到来」と騒いでいた地上波デジタル放送の内実は、
デジタル録画の禁止をしたいのがホンネだったんじゃないかということです。

ハリウッドなどの映画産業の圧力、という話がありますが、
これ、ホントでしょうか。
じっさい、WOWOW や衛星第2のようなチャンネルは、
自力のコンテンツがお粗末で海外スポーツや過去の映画を延々流してますが、
あれを待ち構えて見る人ってどれだけいるんでしょうか。
フツー新作映画は映画館で見るし、
こたつみかんで映画を見る人はセル DVD を買うか
(ハリウッド映画なら 2000 円しない。大人一人当たりの入場料より全然安い)
レンタルヴィデオを借りてくる(おおむね 300 円)のが現実的でしょう。
未ソフト化作品を放映します! という付加価値のつけ方はあるかもしれませんが、
であれば視聴者は録画したいと思いますよ。
早朝だったり、深夜だったり、視聴者の都合を無視した時間に放映するなら、
録画を許してしかるべきだと思いませんか。

昨日「アニマックス」で「めぞん一刻」というアニメをやってて、
「今見ると、キツいなあ・・・」と思いながらぼんやり見ていたんですが、
CSってすごいCM多いですよね。加入代払うんだから、CMは削減して欲しいです。
それも地上波のような作りこんだ、見て楽しいCMなら分かりますが、
誰も見てないから力が抜けきっていて、「ソニー損保」と通販の宣伝がほとんどです。
(何度も何度も繰り返しです。録画しないで見てると結構アタマ痛いです)
で、「めぞん一刻」のCMタイムには「めぞん一刻」のDVDボックスの宣伝をやってて、
つまりこれは、DVDで何回も見たければ4万円出して買えと! 主張してるとわかります。
ぼくなんか理性が残ってるから買いませんが、これ、買う人相当数いますよ。
かわいそうだと思いませんか。録画を許してくれさえすれば買わずに済むのに。

フジテレビ721で元旦朝から20時間ぐらい、
過去の「めちゃイケ」全部放映というのをやってましたが、
これなんか HDD 録画以外の現実的な視聴は考えられません。
正月からテープを入れ替えたり、あるいはリアルタイムで20時間めちゃイケを
全部見たりする人がいると思いますか。フツーいないって!
けどでも、コピーワンスなんです。そういう風になってるんです。
でもポニーキャニオンは過去のめちゃイケ全時間DVDを発売するかというと、
出さないわけですよね。つまり視聴者のニーズに十分答えるポテンシャルを持っていながら、
すごくケチくさい、言ってみれば、不可解なまでにケチくさい理由でニーズに応えていないわけで、
これは支持を失っても仕方ないと思います。

なんて言葉をいくら重ねても、
テレビの録画じたい褒められたことじゃないし、
デジタル放送をデジタル録画したいという要望じたい特殊だし、
海賊版ビジネスにつながるという主張も理解できないでもないので、
落ち着け、とお読みの方は思われるかと思うんですが、
でもどうでしょう、こういう一部のダビンガー(正しい英語でいうとダバーか?)を
取り締まるだけのために、多くの善男善女は「テレビ新時代」という煽りに躍らされて
20万円だか使ってテレビを買い換えろっていうわけですよね?
しかもワイド型で、実質の大きさは小さくなり、
多くのご家庭ではヘニョーンと引き伸ばされた放送を見て
「なんかこのテレビで見てると頭が痛くなる・・・」とか思ってるんですよね。

で、HDD&DVD レコーダーも、去年の年末に掛けてものすごくフィーチャーされてますが、
「DVD-R にデジタル番組を焼けない」
「複数の DVD にデジタルコンテンツを残せない」
ということを知るのは、買った後という人も多いんじゃないかと思う。
多くの機種は DVD-RW や DVD-RAM に「移動」するという逃げ道があるので、
1つだけはコピーを(高価なメディアに目をつぶれば)残せはしますが、
たとえば鳴り物入りで出たソニーの PSX のように、
それが「まったくできない」機種もあります。
こういう機種は「2004年春から地上波デジタル放送は残せません」と明記すべきだし、
普通の雑誌にも報道があってしかるべきと思いますがどうでしょうか。
(PSX を買って、その事を知らなかった方、いませんか。
 あれ安いですから買いそうですよね。買う前に考えた方がいいと思いますよ)

不景気で、テレビはみんながまとまったお金を使う産業として注目されています。
でも、ワイドテレビも、デジタル放送も、HDD&DVD レコーダーも、
上記のようないろんな事情が絡まって、非常に買いにくいものです。
これ、買う側の論理より、売る側の論理が先行しているからではないですか。
そしてそれは、構造的不況の元凶とも言えるものではないでしょうか。
「日はまた昇る」という映画はVHSビデオを作った人の物語だそうですが、
テレビ番組個人録画はそれ自身一つの文化であり、
多くの技術を推し進めてきた一つのパワーだと思うんですが、どうでしょうか。
いや、ホント、エアチェックマニアは日本のエレクトロニクス、
映像文化に、すごく貢献してきたんですよ。なんでこんな砂掛けられるような
目に遭わなきゃいけないの。

大きな声ではいえませんが、コピーワンス信号は、
有名な方法と、あまり有名でない方法で除去できることを発見しました。
しかしながら、それは違法ですし、たぶんコンテンツ配信側も
そのうち対策すると思います。
それ以前に、そこまでして録画したい魅力的なコンテンツがないのも
事実です。魅力的なコンテンツを配信するまでに局が力をつけるには、
多くの人に支持されなければなりませんし、それには使い勝手がよくなければ
ならないとぼくなんか思うんですが、
そして、コピーワンスの件はその使い勝手を大きく殺いでいる
(マニアのエアチェック需要を当てこんだコンテンツなのに、
 エアチェックが制限されている。矛盾している)
と思うんですが、どうでしょうか。

地上波デジタルは、流行らない、と思います。
アナログハイビジョンやキャプテンと一緒で、
掛け声ばかりでそのうち立ち消えするんじゃないでしょうか。
一般の人は高いお金を出してテレビを買い換えるだけの魅力がないし、
マニアの人はコピーワンスでソッポを向くでしょう。
(それよりはDVDボックスを見たほうが好きな時間に好きな番組を見れて楽しい)
ということで、話題の高価なテレビ/ビデオは、買い控えるのが正解だと思います。

追記:
例のコピーワンス信号を除去する工夫を試みたら、
BSデジタルで双方向信号が送れなくなりました。
つまり通販の宣伝(ほんっとにこれが最近多い、ウザい)で
「リモコンの (e) ボタンを押すとご購入いただけます」
というのが使えなくなりました・・・ていうかいらんわ!!!

Last Update : 2004/01/13 18:58