日々叢書(この著者ちょこちょこ昔の文章直します。スイマセン)

5分でわかる星新一

なんかテレビみて物知りになるのが流行ってるらしくて
5分で分かるxx、というのを立て続けにやる
ペダンチックなんとかという番組をついさっきやってました。
(まあ、深夜のテレビなんかで5分で何かを分かろうとするのを
 自分で皮肉ってるような番組ではあるんですが)

その中で「5分で分かる星新一」というのがあって、
でも星新一を題材にペダントリーが成立するでしょうか???
星新一に詳しいからって特に学があるってことにならないですよね。
ふつう中学生時代に熱病のように読むものですよね。
(もちろん、それから大人になって再読するとまたイロイロ
 発見があるのだが)
これほど「5分で分かる」題材に合わないものはない。
(普通ハイデッカーとかアインシュタインとかマルクスとか
 そういうものでしょうか。よく知りませんが)
5分あれば星新一の小説が確実に1篇読め、
小説を1篇読むほうがよほど星新一を深く理解できそうなもんです。

で、星新一をディープに解説する役として登場したのが
「林家こぶ平」で(・・・)、
彼は例の「星鶴」について語っていました。

星新一がよくサイン代わりに書いたイラストの星鶴は、
飽食のために口が大きく、テレビの見過ぎで目が大きく、
食べすぎで太ってしまって飛べず、
有害物質を溜め込んだために食料にもなれず、
さりとて鶴は千年といってなかなか死なない、
こんな動物に何の存在意義があるでしょうか、
というものなんですが、この動物をこぶ平先生評して曰く、
「これは何かわれわれ現代人について
 なんとも奥深い予言、あるいは皮肉めいた
 ものを感じさせてならないんですよねぇ・・・」

わたしは顔面が発赤し、あわててテレビを切りました。(本当)
ああもう。ああああもう。

追記:
筒井康隆さんの子供のための「SF教室」という本が
ポプラ社から出ていて耽読しました。
桂米朝師匠が同じポプラ社で「私と落語」という名著を
あらわしているのに奮起して(?)書かれたものだったような。
(でもこの↑文まるまるウソかもしれない・・・)

阿部公房の「人間そっくり」を子供にSFとして勧め、
この本を読んだ後のなんともいえない苦味、やりきれなさを
大事にしろと書いてあって、なんて熱い人なんだと子供心に
(もっとも中学に入ってから)
思ったものです。

で、その中に、星新一さんの偉大さを紹介している一章があって、
大黒様がいきなり現れる小説の、
“主人公であるエヌ氏だかなんだかが「あ、大黒様だ」と言う”
というような文章をまるまる紹介し、
「この<<文章のふくらみ>>がすばらしい。
 この<<文章のふくらみ>>が分からないと、
 星新一の本当のよさは分からないんだけどね。」
と書かれていて、で、そのとき中坊(文字通り)だったぼくは、
その<<文章のふくらみ>>が分かった、少なくともような気がして、
夕暮れの学校の図書館で一人興奮したのを覚えています。
同じ5分ならこういうことを言わないとダメなんじゃないか。
ああ、「SF教室」、読みたいなあ。今も売ってるんだろうか。
売ってないとしたら、今の中学生はカワイソーだなあ。

Last Update : 2003/12/23 01:51