日々叢書(この著者ちょこちょこ昔の文章直します。スイマセン)

探偵物語

テレビ局のプロデューサーが視聴率調査の家庭を買収、
エアロビダンスで有名なサラ金の会長が盗聴という事件がありましたが、
この2つに関連するのは実行犯が「探偵」ということです。

大阪では警察の刑事のことを「探偵」というそうですが、
これは字からしてモノゴトを探る、見張る、というイメージです。

いわゆる業種としての「探偵業」のことを「興信所」といいますが、
これはどういう意味なんでしょう。
goo の辞書によると、もともと結婚相手や新入社員の身元調査をするという感じです。
この場合のおこすという言葉は
(<ruby>タグ使ってみましたがどうでしょうか:)goo の辞書で引いた意味の中では
「テープを文字に興す(この字だって知らなかった)」「事件をかわら版に興す」という、
情報を文字にするということでしょうか。
で、信は信用情報ということで、人の信用をコッソリ調べるということです。

で、冒頭に挙げた2事件はこの2つの意味のどちらにも当てはまりません。
どっちかというと人のプライヴァシーを侵害して獲得した情報を他人に供すること一般を、
プロフェッショナルとして引き受ける仕事という側面もあるということでしょうか。

で、こうやって事件が発覚すると、依頼者が大変な社会的ダメージを食います。
どんなプロであっても危ない橋は渡るわけで、相当の確率で調査しているという事実は発覚し、
浮気の調査や産業スパイの内定のように調査対象が違法行為をしている場合はさておき、
2事件のようにそうでないケースは、事件化します。けっこう依頼主もリスキーです。
あまりがよくない商売ですね。

ところが、この探偵になりたい人がけっこう多いらしい。
テレビのドキュメントで、代々続いた職業(着物問屋かなんか)が振るわないので転業して、
100万だか払って探偵学校に入って探偵になる、というドキュメントをやってました。
その学校はけっこう良心的で、尾行の訓練とかするんだけど、
校長みずからが実験台になって生徒に尾行させます。
しかし、校長が喫茶店に入っただけでカンタンにかれてしまう。
校長もテレビに生徒のカッコ悪いところが映るのはマズいので憮然としていましたが、
見ててやっぱ笑ってしまいました。
で、なんとかかんとか卒業し、元・問屋の若旦那は団地の自室で開業するんだけど、依頼が来ない。
女子大生の二人娘が宣伝チラシをコピーで刷って配るんだけど(この一家が仲良くて感心した)、
依頼は来ない。さて、どうするか・・・というところで番組は不吉に終わっていました。
(たしか森本毅郎の日曜夜の番組)

たしかにこのお父さんの決断が賢いかどうかは議論を待つと思いますし、
番組はアキラカに揶揄的なスタンスでしたが、
見てて思ったのは、モーレツにこのお父さんの気持ちが分かるということです。
世代的な話かもしれませんが、ぼくらは探偵という職業に強烈な憧れがあります。
刑事と双璧かもしれませんが、ぼくは探偵派でした。
小学校のときは児童向けのシャーロック・ホームズを、それこそ耽読したものです。
・正義感
・民主主義のシステムでは正義が実現されないという歯がゆさ
・人のプライヴァシーを覗き見たいという気持ち
・人のできないことをしたいという超人指向
・世の中のウラを知りたいという猟奇趣味
といったことで、冷静に分析するとゼンゼン感心できる動機ではないんですが、
分析しきれない甘酸っぱい、郷愁のような感情と共に強いアコガレがあります。
「サンスタースパイメモ」とか買ってもらいました。
よく言われる話ですが「水に溶ける紙」とか入ってて。もったいなくて使えない。

そんな探偵ですが、内情はなかなか大変なんだなあと、
2事件の報道を見て思いました。

今回サラ金の方の事件を引き受けたのが
「アーク探偵センター」とかいうところで、これがちょっと笑いました。
えのきどいちろうさんの本で、興味を持ったことに少人数のアンケートを取って調べる
(イタリア人はバカという結果が出てしまって国際問題になった、、忘れてやれよ!)
という本で、すごく面白い本で、書名は忘れたんですが(書名は忘れたのかよ!)、
その中で引越し業者はとにかく電話帳の順序にこだわるという話がありました。
アート引越しセンターは有名ですが、その上を行くアーク引越しセンターというのがあって、
さらにその上を行くアーイ引越しセンターという非常にかわいい社名になって
(アーイだって・・・しかもイのロゴが微妙にトに読み間違えるようになっている)
究極は「ア」という社名になります。原理的にこの上はない。
ここに電話すると(えのきどさんは電話してみるんですが)
「はい、『ア』です」
と電話番の人が言うことは当然なくて、どっかの業者の名前をいうそうです。で、
「えっと、『ア』さんじゃないんですか?」
と食い下がっても(えのきどさんは食い下がるんです)要領を得ない。
結局、同じ店が複数の屋号(!?)を持っていて、その一つが「ア」なのだが、
電話番の人もそれを把握してるとは限らない、という話です。
電話局の人によると、一般に商店はアイウエオ順の序列にこだわる性格があるが、
引越し業と探偵業はその傾向が特に激しいそうです。
問題のアーク探偵センターというのも、そうした会社のひとつなのかなあと思ってちょっと笑ったのでした。

ところで赤川次郎原作の「探偵物語」ですが、小説も読んでなく、映画も見てないんですが、
主題歌は超超超超気に入って、たしかレコード買いました。
松本隆作詞、大瀧詠一作曲、薬師丸ひろ子歌。
ぼくは知世派だったんですが、これだけは買いました。
最後の♪好きよ、たぶん、でもね、きっと〜というのが
松田聖子の「小麦色のマーメイド」(これも松本隆作詞、作曲は呉田軽穂=松任家由美)の
♪好きよ・・・キライよ〜というのと似てますね。
こっちも好きでレコード買いました。伊代派だったんですけどね。

Last Update : 2003/12/03 14:13