日々叢書(この著者ちょこちょこ昔の文章直します。スイマセン)

右様

先日別の掲示板で友達が、
父の形見の(!)「宮本武蔵」を読んでたら
「右様」という言葉が出ていたがこれは「左様」と同じ意味なのか、
確かに縦書きで文章を書くと前の話題は右に来るが、
という話がありました。

これは漢字で国語辞典を引けないので起こる現象ですが、
gooの辞書によると確かにこういう言葉があるが
「みぎよう」と読むようです。
意味は「右の様に」(前に書いたように)という意味です。

で、問題の「左様」ですが、
これは「然様」とも書き、同じ辞書によると「(相手の言や前の話題を受けて)そのような」という意味になります。
微妙に違いますね。

これは、手元の「新解さん」こと「新明解国語辞典」によると、
「然(しかる)るようなら」という意味の
「然様なら(しかようなら)」という言葉があり、これがのちに
「さようなら」と読むようになり、
借字によって「左様奈良」「左様なら」と表記するようになったそうです。
(借字はよろず屋のおばちゃんが醤油を正油と書くようなこと)

ということで、別系統の、意味も違う言葉ということになります。

ただ、ここでややこしいのは、上記の経緯を知らないで
「左様」という言葉を「前の話題なら(縦書きの文章なら)
右に出てるじゃないか」と「右様」と誤用して言い換えることが、
宮本武蔵の時代にもあったんじゃないか、
あるいは吉川英治が気取ってそう書いたんじゃないか、
という可能性があることです。

たとえば世論という言葉は今はセロンと読むのが普通で、
ヨロンと湯桶読みすると怒られたりしましたが、
しかしもともとは輿(よ)論と書いたのを借字で世論と書いたので、
ヨロンが本来は正しいのだ、という現象です。
そういう意味で、「左様」の代理語として「右様」という言葉が
流通していて、「うよう」と読まれさえしていたかもしれないと
思うのですが、これ以上はちょっとわかりません。

Last Update : 2003/11/14 11:37